東京風俗ほしいときから
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その娘(こ)とはバイト先で知り合った。
駅ビルの地下にあるレストランとファースフードの店。
二人でアメリカンドッグを作って売った。
衣を作るとき水が先か粉が先かでもめた。
ハスキーな声と笑顔が魅力の、
いちばん結婚を意識した相手だった。
ただそのときはまだ学生だったし、
「とんでもない」と親にも反対された。
初めて会ってから六年後の夏、
社会人らしくネクタイをして新宿で会った。
三角ビルのいかにも高そうな、
ステーキ屋に思い切って入った。
目の前で肉をサイコロ状に切り分けてくれて、
焼いてくれて箸で食べるやわらかいステーキ。
お代は二人で弐万八千円なり。
なかなか店から出てこないので、
お金が足りずにヒドイ目に遭っているんじゃないかと、
心配になったらしい。
「恋は自然消滅で終わるのがいい」。
彼女がそうつぶやいたことがあった。
それからそれぞれが別の誰かと付き合っていたこともあり、
しかもそのことをお互いが知っていたこともあり、
気持ちはだんだんほかへと移り、
ゆっくりと冷めながら恋は自然に消滅した。
なんだか、お互いにしくんだような、しくまれたような、
自ら然るべく消えるということは、そういうことなのかもしれない。
・記事抜擢
切なく感じたので、
載せてみます
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